科学と技術
トイビト編集部

現代は「科学技術文明の時代」と呼ばれる。通常は、科学の発展によって開発された技術が現代文明の根幹を支えていると考えるからだ。その意味で、「科学技術」と呼ぶのが当然のように考えられているが、実は科学と技術の内実は根本的に異なっており、従って人間の営みとしても異なっている。「科学は物質と独立した形而上の概念である抽象的な原理(や法則)」のことであるのに対し、「技術は科学が発見した原理(や法則)を具象的な自然の事物(物質)に適用して人工物を製作する」ことである、という根本的な違いがある。このことを踏まえて本稿では、科学と技術が辿ってきた道筋とそれぞれの近代化、この先の展望について考えてみたい。(全3回)
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1. それぞれの出自
池内了
英語のscienceの語源は知識全般を意味するラテン語のscientia(スキエンチア)であるとされている。明治時代にscienceという言葉が輸入されたとき、最初に提案された訳語は「窮理学」、つまり自然物一般の原理を窮(きわ)める学問という意味であった。しかし、19世紀中ほどのscienceの中身は、既に物理学(p
2. 科学の近代化
池内了
先の歴史に見たように、科学そのものの歴史は浅いと言うべきだろう。人間の精神的活動である宗教や芸術は何万年という長い歴史があるが、同じ精神的活動である科学が自立して独自の歩みを開始したのは、ようやく16~17世紀であるからだ。故にこの時期は「科学革命」と呼ばれるが、ここでは「第1の科学の近代化」と呼ぶ。これによって人間
3. 技術の近代化
池内了
技術の分野は、具体的物質を通じて人間の生活に密着しており、抽象的概念を扱う科学とは全く別個の道を歩んできた。「火の発見」(第1の技術の近代化)、「農業の開始」(第2の技術の近代化)、18世紀後半に始まった「産業革命」(第3の技術の近代化)を経てきたことは先に述べた。やがて、人類は科学の知識の技術への応用が非常に有用で